STORY
中にだしてもいいんだよ、と囁けば、
マサルは大抵子供のようにウキウキし、
彼のその笑顔をみたいがためにアタシはセックスを続けていた
仁絵34歳。夫が海外に長期出張中の彼女は日々あてどなく街をさまよい、無為な時間を酒とともに流し込んでいる。
マサル48歳。電鉄会社の車掌。運転士になりたかった夢は国家試験に三度落ちてあきらめた。
偶然に知り合ったふたりは意気投合して、ごく自然に接近する。
互いに家族のある身ながら逢瀬を重ねる男と女。
ある日マサルが仁絵の前から姿を消してしまい、彼女はほかの男たちと寝てみるが、心の空洞が埋まることはない。
ウルサクて、退屈な人間のつくった街で仁絵はマサルの影を求めてさすらう。
ひとりの女性の性の迷宮と罪の物語の行方は――。